暮らしを醸す。 蔵めぐり 三豊市

暮らしを醸す。 蔵めぐり

  • line
昔ながらの杉樽仕込み 仁尾酢
香川で酢の醸造が始まったのは、約270年前の江戸中期。三豊市仁尾町で、田野屋 中橋仁右衛門が米酢造りを始めたのが最初と伝えられています。

杉樽でじっくりと醸される田野屋の「仁尾酢」は、しっかりとした酸味とまろやかさが同居する絶妙な味。その製法を守り受け継いでいるのが、現在も創業の地で営業を続けている中橋造酢です。

その醸造蔵は、前日までに予約すれば見学も可能。今回はめったに見ることができない、昔ながらのお酢造りの現場を見に行きました。

蔵があるのは、三豊市仁尾町図書館の隣りです。お店の場所とは違うのでご注意を。
今回ご案内してくださったスタッフの方によれば、焼板を巡らせた重厚な外観の建物は築100年以上、中にはいつから建っているのか分からないものもあるのだそう。

さっそく蔵の中に入ると青いホーローのタンクがずらりと並んでいます。実はこれは日本酒を造っているタンクなんです。なぜお酢屋さんに日本酒?と思われるかも知れませんが、それは酢の作り方に理由があります。

酢は酢酸菌がアルコールを発酵させることで造られます。したがって、米酢の醸造はアルコールを造るために、まず日本酒を造り、その日本酒をさらに酢酸菌で発酵させるという手順が必要になるのです。

この大人ふた抱えもある大きな釜は、日本酒に使う米を蒸す時に使われるもの。この上にさらに巨大な蒸し器が乗せられます。

先ほどのお釜の下にある焚き口。お釜の高さを低くして作業がしやすいように、地下に造られています。

中庭を通ってさらに奥へ進みます。庭の真ん中には高いレンガの煙突が。昔はもっと高かったのですが、地震で上部が崩れてしまったのだそう。

そしていよいよ酢を醸造している杉樽とご対面。蔵の中にはほんのり酢の香りが漂っています。全体にむしろが巻き付けられているのは、酢酸菌がよく働く人の体温ぐらいに保温するため。

樽の蓋を持ち上げると、寒い時期は湯気が立ち上ります。表面に浮いている膜のようなものが酢酸菌。酢の発酵には酸素が必要なので、空気に触れられる上側に浮いているというわけ。

近づくと、お酢の芳醇な香りを一段と強く感じます。

酢を造るのに、まず日本酒を造るとは驚きです。
戦後、多くの酒蔵では木樽が使われなくなっていきました。日本酒を木樽で仕込むとき、樽自体に吸収されたり蒸発したりして自然と減ってしまうのですが、酒税法の改正によってこの自然減分にも税が加算されることになりました。これが原価を圧迫し、木樽の酒蔵は減っていったのです。
酢の醸造においては酒税法の影響を受けなかったため、昔ながらの木樽仕込みが今も続いているのです。


蔵の見学が終了した後に、歩いて10分ぐらいのところにあるお店にもお邪魔しました。

お店では仁尾酢の購入ができます。写真の一升瓶(1800 ml)の他に、五合瓶(900ml)、二合瓶(360ml)があります。お土産には手軽な360mlサイズが人気だそう。

昔ながらのラベルがなんともレトロ。

ゆるーいフルーツのイラストが入ったこちらは、仁尾酢に三豊市産の果物を漬けた「フルーツDE酢」。ドレッシングなどに使ったり、直接飲んだりもできます。
フルーツDE酢製造時の果物を使用した「酢ーぱいジャム」というユニークな商品も。
酢のセットなどには、包み紙がハートと鶴の折り紙になっている、こんなかわいい包装もしてもらえます。包装には少々時間がかかりますので、その間に周辺の古い仁尾の街並みを散策してみるのもいいですよ。

昔ながらの製法で作られたまろやかな仁尾酢は、地元の食卓にはなくてはならないもの。
全国各地で減っているという木樽ですが、これからも長くこの技術が続いてほしいと思います。

-----------
中橋造酢株式会社
※蔵の見学は前日までに要予約(受付時間8:00-17:00)
営業時間 8:00-17:00
定休日  無休(臨時休業あり)
住所   香川県三豊市仁尾町仁尾丁944(店舗住所。蔵は違う場所にあります)
電話番号 0875-82-2802

見学無料
所要時間 約30分

 
 

同じテーマの記事

当サイトでは、利便性の向上と利用状況の解析、広告配信のためにCookieを使用しています。サイトを閲覧いただく際には、Cookieの使用に同意いただく必要があります。詳細はクッキーポリシーをご確認ください。

同意する