思い出もっと、 とっておき体験 三木町 丸亀市

お茶体験 渡邊邸(三木)・京極庵(丸亀)

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日本の精神文化に深い関わりがある「茶道」。一度はお茶室で抹茶をいただいてみたいと思う反面、作法がわからないなどの理由で遠慮してしまう方も多いのではないでしょうか。しかし香川県内には、どなたでも気軽に茶道が体験できるスポットがあります。今回は三木町と丸亀市にある、100年以上の歴史を持つ由緒あるお茶室へ行ってみました。
1軒目は三木町にある「渡邊邸」。ことでん長尾線の白山駅を出て、線路を渡った先に大通りがあります。そこを右折して、10分程歩き、藤井製麺手前の小道を進むと現れる大きなお屋敷が渡邊邸です。
立派な門をくぐると、中にもう1つ門が。こちらの門は茶室から見える庭へ通じていました。この門には入らずまっすぐ進みます。
玄関を入ると象眼(ぞうがん)の入った引き戸をはじめとする、様々な装飾が目に飛び込んできて驚かされますが、これはまだ序の口。本当にびっくりするのはこれからです。
玄関から続く部屋はなんと茶室でした。そしてその隣の部屋も茶室。実は渡邊邸は6つもの茶室がある、お茶で客人をもてなすことに特化したお屋敷なんです。築250年の建物を現在の形にしたのは、茶人だった先代の渡邊順久(じゅんきゅう)氏。かつて高松市屋島の南東一帯の古高松(ふるたかまつ)地区にあった豪農「揚(あげ)家」。京阪神にも名を馳せた名家には、10もの茶室があり、その5つをこちらへ移築したのだそう。玄関横の茶室「丸炉(がんろ)の席」には、さり気なく人間国宝の漆芸家・音丸耕堂作の机が置かれていました。
それでは邸内を見学していきましょう。お隣の「雀巣庵(じゃくそうあん)」から庭を眺めると、大きな蒟醤(きんま)のテーブルに庭の木々が映り込み、まるで一枚の絵のような美しさです。
敷地の一番奥にある離れの「狐月庵(こげつあん)」。たたきに敷き詰められている緑色のタイルは、織部焼という豪華仕様です。
にじり口をくぐって中へ入ると、そこは先ほどの茶室とはまた違う心地良さのある空間でした。よく見てみると、炉のフタの穴がヒョウタンになっていて、水屋まで意匠が凝らされているのが分かります。
庭に面した廊下には、映った影がかげろうのように見えるなんとも風流な窓が。
再び本館へ戻ってお茶をいただきましょう。場所は「鯰魚庵(ねんぎょあん)」。渡邊順久氏が自ら手がけた茶室です。欄間に福のシンボルであるコウモリがあしらわれ、床の間に金蒔絵が隠されています。床框(とこがまち)は普段黒いカバーで覆われていて、それを外すことで蒔絵が現れるそう。客人を楽しませる様々な仕掛けがそこかしこに施されています。
庭を眺めながら、お抹茶とお茶菓子をいただきました。お茶は飲みやすいスッキリした味で、器は代々受け継がれてきた名品。上品な甘さのお菓子は、地元さぬき市長尾町の老舗和菓子店「鶴屋」謹製です。
「作法は気にせず、自由気ままにお茶を楽しんでいただければ」と語るのは、渡邊順久氏の娘である当主の小橋あやみさん。お茶だけでなく、それぞれに趣向を凝らした茶室の建築様式や美術品なども一緒に楽しむことができる、1軒丸ごとおもてなしに特化したお屋敷でした。
 
2軒目は丸亀市にある「京極庵」。JR丸亀駅から丸亀港のシンボルである太助灯籠の方へ歩いて数分。灯籠の手前の路地を入ったところにあるこちらのお屋敷は、丸亀藩主京極家付きの商家だった前谷家が1886(明治19)年に建てたもの。街中にありながら周囲の喧噪から離れた静かな空間です。一時は取り壊されそうになっていたお屋敷を救おうと、市内で不動産業を営む鈴木武子さんが購入。茶道をはじめとする日本文化に触れられる場所として、一般に公開しています。
案内された先にあったのは「山里の庭」と名付けられた中庭。12種類ものシダをはじめ、ヤマブキ、イタドリやワラビなどの山菜、南天などの木々が植えられている様は、まるで自然をそのまま切り取ってきたかのよう。季節の草木をありのままに楽しむという、茶道の自然観が垣間見られるお庭です。
庭の奥にあるのが、離れの茶室「松濤庵(しょうとうあん)」。千利休好みのわずか2畳ほどの小庵には、これを建てる際に助言をしたという日本画家・平井楳仙(ばいせん)や、丸亀出身の女流日本画家・山下紅畝(こうほ)が足しげく通ったのだそう。
母屋の奥にも茶室があり、この日はそちらでお茶をいただくことに。中庭をぐるりと回り込むように続く廊下の窓に入っていたのは、明治から大正期にかけて作られていた波ガラス。ガラスを通して微妙に歪んで見える風景がなんとも風流です。また廊下は長い1本の栂(とが)の板で作られていて、それがきしむ音で廊下を通る客人の様子が茶人に伝わるように作られています。
茶釜は人間国宝・高橋敬典作の百代屋釜(もづやがま)。飾られている千利休由来の一重切(いちじゅうぎり)の花入れや、江戸中期に作られた長崎螺鈿(らでん)の文箱が目を引きます。
紅葉をかたどったお菓子は、丸亀市の老舗和菓子屋・寶月堂(ほうげつどう)さんから取り寄せているもの。器の柄も紅葉で、紅葉づくしです。また器は、京極のお殿様が野々村仁清の茶器を写して地元の窯で焼かせたものだそう。京都から取り寄せているという最上級のお茶は、非常に上品なお味でした。
京極庵は茶室だけでなく、京極家ゆかりの品々や日本画などの美術品が多く展示されています。昔ながらの急な階段を上った先が展示室。まずは京極家伝来の品から見ていきましょう。ガラスケースに入っているのは、京極家の平四つ目結の家紋が入った将棋盤。よく見ると、側面の家紋の位置が左右で違います。これは、高い位置にある方でお殿様が打っていたからなんだそう。きらびやかな着物は、大名家のお姫様の花嫁衣装。お殿様が子供の時に着た着物も並べられていました。
隣の部屋にはたくさんの日本画が。中でも「松濤庵(しょうとうあん)」へよく訪れていたという山下紅畝の作品は、屏風から色紙まで様々なものが展示されています。筆のタッチが女性らしく繊細で、見る者の目を和ませてくれます。さらに香川に縁のある東山魁夷(かいい)や平井楳仙(ばいせん)の作品もあって、小さな美術館のようでした。
 
また京極庵では「茶道裏千家淡交会丸亀分会」の先生方によるお茶会や茶道教室も開講しているので、機会があれば参加してみたいと思います。
 
1世紀以上の歴史を持つ2つのお茶室。お茶はもちろん、それ以外見どころも満載で、何度も訪れたくなる魅力がありました。
 
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渡邉邸
※3日前に要予約
※現在予約のみで営業中、詳しくはお問い合わせ下さい
住所   香川県木田郡三木町下高岡2569-1
電話番号 090-1572-7877
https://watanabetei.net
お茶体験 2,500円(お抹茶・お菓子付)、見学・お抹茶・お茶菓子のみの場合は800円
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京極庵
営業時間 10:00-16:00
定休日  月曜日・火曜日
住所   香川県丸亀市西平山194
電話番号 0877-24-5288
https://www.kyougokuann.com/
拝観料 500円 お抹茶・お茶菓子 1,000円
 

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