香川旅帖 特別編 高松市

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高松の朝は早い。
早朝うどんをキメるためならば、早起きだって苦ではない。
お出汁が身体中に染み渡り、昨日の疲れを感じさせないエネルギーが漲ってくる。
なんせ今日の予定は男木島(おぎじま)からの四国八十八箇所巡りという長距離移動の連続。
こうなったら、リポDの代わりにうどんで乗り切りたい。
お腹も満たされ、早速高松港からフェリーで40分の船旅へ。
向かうはアートな島でもある男木島、隣には女木島(めぎじま)。
どうして高松には気になるネーミングで溢れているんだ…と
しばし考え込んだが、心地よい海風に揺られているうちに、
“写るんです”に没頭してしまった。
乗ってきた船は赤くレトロな趣きでたまらない。
「んおめ」と書いてあったが、どうしてもパッと見では「おめん」と脳内変換されてしまう。脳の神秘的な力に支配されてしまった記念に、逆光で神々しく撮っておく。
 
※「めおん」は2021年2月28日に、新船「シマシマめおん」に代替りしました。
  • ジャウメ・プレンサ 「男木島の魂」

    ジャウメ・プレンサ 「男木島の魂」

  • ジャウメ・プレンサ 「男木島の魂」

    ジャウメ・プレンサ 「男木島の魂」

  • ジャウメ・プレンサ 「男木島の魂」

    ジャウメ・プレンサ 「男木島の魂」

男木島へ上陸すると、ジャウメ・プレンサ氏作品の「男木島の魂」という男木交流館が目に飛び込んできた。
屋根に様々な文字が施され、その影が地面に写るんです。
美しい真っ青な空と海の中に真っ白な建築物が浮かび上がり、
爽やかな情景にシャッターも止まらない。
 
  • 山口啓介 「歩く方舟」

    山口啓介 「歩く方舟」

  • 山口啓介 「歩く方舟」

    山口啓介 「歩く方舟」

無類の動物好きでもあるので、
島のあちこちで出会うネコたちにうっとりしながら、
豊玉姫神社など、しばらく島を歩いて散歩していると…
山口啓介氏制作による「歩く方舟」の作品の海に向かって歩く巨大な足が見えてきた。
遠くの方からだとAラインのスカートの様にも見えるし、
バレリーナのような、しなやかなで強い印象も受ける。
背景の山脈に沿わせてシャッターを切ってみると、
キレイに背景に馴染む不思議で、魅力的な写真が撮れた。
あっという間の島旅を終えて、いよいよ憧れだったお遍路の旅へ出発。
88もの煩悩で溢れたわたしもきっと生まれ変わるはずと、
藁にもすがる思いで、旅のスタート地点である一番札所の「霊山寺」へやってきた。
車から降りて遠目で入り口を見ると、お遍路さんの格好でポージングをした人がいる。
記念撮影しているのかと思って近づいて行ったが、
周囲を見渡してもカメラを構えている人は見当たらない上に、
ポージングしたまま微動だにしないのもおかしい。
よくよく見ると、その正体は昭和の懐かしい姿をしたマネキンだった。
厳かな気持ちで一番札所に訪れたのに、なんだか虚をつかれてしまって思わずニヤけてしまう。
 
旅支度を終えたものの、どうにも1日で回りきれるものではないと地図を見て悟る(遅い)。
そこで、普段は見ることができないエリアを特別公開している札所へスキップ作戦に切り替えた。
早速、第75番札所「善通寺」へ向かう。
ここでやはり気になったのは、本堂横の日本で3番目に高い木造の五重塔。
塔のデザインはシンプルでいて、とても美しい。
内部に入ってみると、心柱が中央にドンと建てられているが、下を見ると柱ごと浮いている。
しかし、浮いている事実を前にして、わたしの頭をよぎったことは「心柱」である。
なんとも真剣な眼差しで心柱を見ているように周囲には見えたかもしれないが、
某有名漫画で心柱って登場人物いたっけ?と、
またもや栗林公園と同じシチュエーション再来。(前編のリンク)
気を取り直して、柱が浮いている理由を伺うと、
柱の役割は未だ解明されていないと言うが、
耐震のためや、木が収縮した際に初めて真の柱になるなど、
様々な役割が挙げられていた。
堂内の仏様の撮影を無事に終えて外へ出ると、
香川県天然記念物として指定されている大きな楠木が目に入った。
樹齢千数百年という長い長い年月をここで佇んているのかと思うと、
心が急に静まり返ってしまう。
きっとなんとも真剣な眼差しで大楠を見ている様に周囲には見えたかもしれないが、
某有名アニメの〇〇ロがいそうだなぁと、またもや(割愛)。
 
次に向かったのは第71番札所「弥谷寺(いやだにじ)」。
日本三大霊場の1つとして、ここ弥谷山は神や仏が宿る場所。
気持ち引き締めていると、
本堂まで540段の石段を上るというミッションが待ち受けていた。
途中、赤い手すり階段の「百八階段」があり、
ここを過ぎれば108の煩悩がなくなる効果があると聞く。
ありがたい…これ以上漫画やアニメが神聖な場所でよぎっては困る。
即効性があるのかわからないが、はりきって上っていこう。
ここから先は、百八階段後の真面目なわたしでお送りしたい。
階段を上りきり、一息ついて辺りを見回してみると、
見てきたお寺とはまた雰囲気が異なり神秘的な印象を受ける。
水場の洞窟には修行僧たちによって刻まれた無数の仏様が祀られ、
大師堂奥の岩屋は空気がひんやりとして、背筋も自然と伸びるような気持ちになる。
 
特別公開中の江戸時代ぶりに外へ出られたという弘法大師像の姿に感動しつつ、
わたしがここで一番記憶に残ったのは「明星の窓」だった。
きれいな丸い窓から月夜の光を頼りに学問をされたというストーリーがまた一層わびさびを感じる。
わたしもここの窓辺で勉学に励みたい。
ここなら東大にも受かる気がする。
そしたら、超大手企業に就職して、いつの間にかアラブの石油王と結婚する気がする…!
…なんてな事を思い浮かべているので、百八階段の効果なしという関係者各位にとっては非常に重苦しい結果が出てしまった事をここにご報告致します。
 
 山を降りる頃には日も暮れて、キレイな月の光を見つける。
古来から変わらないであろう光の輝きを全身で受け止めながら、
改めて旅を振り返りながら帰路につく。
香川の奥深い歴史に触れながら、
時空を越えて出会えた貴重な時間を、
写真に残すことができる今の時代に感謝したい。
 
さてさて、今夜のうどんのトッピングは何にしようか?
【プロフィール】
寺島 由里佳(フォトグラファー)
ポートレイトを中心に、広告雑誌媒体などで活動中。
ライフワークに動物園にいる動物たちを撮り続け、いずれは全国世界の動物園を巡るのが夢。 
自身初の写真集「きょうも、どうぶつえん」を発刊。
母校の立教大学での講師や、その他企業や行政とのイベント企画に参加。
写真に関するワークショップ、トークショー、コンテストの審査員などの活動を行う。

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