建築女子部 観音寺市

豊稔池堰堤

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香川県の西の端・観音寺市を流れる柞田(くにた)川。その上流にある「豊稔池堰堤(えんてい)」は、今から約90年前の昭和4年に竣工したダム。長年の風雨にさらされた石積みの堰堤は、中世ヨーロッパの古城を思わせる風格のある造りです。重要文化財にも指定されている貴重なダムを見に行ってみることにしました。
豊稔池堰堤へは高松自動車道の大野原ICから車で約20分。県道8号線を徳島方面へ進み、途中で県道9号線に入ります。(豊稔池堰堤の看板があります。)
この案内看板のところで左の脇道へ入って、少し進むと駐車場に到着。
駐車場からも既に堰堤が見えますが、遠くからでもすごい存在感です。趣のあるレンガの欄干の橋を渡った先にあるのが、豊稔池堰堤に隣接した豊稔池遊水公園。芝生広場や東屋もあっていつも観光客で賑わっており、春には桜が満開になる名所としても知られています。
芝生広場を抜けて堰堤のすぐ近くへ。近くで見るとその大きさに圧倒されます。堤高(ていこう)は30.4m、堤長(ていちょう)は128mもあり、こんな大きな物を大型の建設機械のない時代に造り上げたのが信じられません。また、その形も普段私たちが目にする一般的なダムとは全く違います。水を止める堤体(ていたい)が弧を描いており、それが複数連なっているマルチプルアーチ式という形式。この形式のダムは珍しく、日本では、この豊稔池堰堤と宮城県にある大倉ダムの2基しか現存していません。しかも石積みで仕上げた石積み式マルチプルアーチは全国でもここだけです。
(写真2枚目:五郷里づくりの会提供)
  
それぞれのアーチを繋ぐ扶壁(ふへき)と呼ばれる支柱に開いている四角い穴は、洪水吐(こうずいばき)という放水口。ここから水が流れ出る様子がまた美しいのですが、この日は残念ながら出ていませんでした。
  
 
実は豊稔池堰堤は、通常の取水施設以外にサイフォンの原理を利用して、通常の洪水吐よりも低めの水位で放水されます。このサイフォンの排水能力を超える場合は、他の一般的なダムと同様に、通常の洪水吐からも水が流れます。例年夏に行われるユル抜き式(貯まった水を抜くこと)以外は、降雨によって放水されるので、いつ放水されるかは誰にも分からず、見ることができたらかなりラッキーです。
  
 
またキレイな写真を撮りたいなら午前中がおすすめ。堰堤は東を向いているため、午後からだと逆光で真っ黒になってしまいます。
思う存分眺めた後は、もっと堰堤に近づいてみましょう。青空をバックに仰ぎ見る石積みアーチは大迫力で、大人一抱えもある石の大きさも間近で確認できます。アーチの下は足下がかなり滑りやすいので注意。また放水されている時は入れません。
公園の東屋の近くには、平成の補修工事の際に取り替えられた中樋(なかび)取水バルブと土砂吐樋(どしゃばき)門が保存されていました。そのすぐ近くには工事に使われた火薬を貯蔵していた火薬庫の壁が残っています。実は、この中樋取水バルブ、土砂吐樋門、火薬庫も、重要文化財に指定されているのだそう。火薬庫跡の横にはダムの上に続く階段があるので登ってみましょう。
木々に囲まれた階段を登りきると、豊稔池を見渡せる場所に出ました。山々の間に広がる池の水は、建設から90年近く経った今も変わらず農業用水に利用されています。ここ、ダムの手前部分はアーチ上部の構造をしっかり見ることができるビューポイント。ただし堰堤の上部へは立ち入り禁止なのでご注意を。また周囲には豊稔池築造の歴史が書かれた、豊稔池堰堤と共に重要文化財に指定されている「豊稔池碑」やダムを護る水神宮もあります。
駐車場に戻って県道9号線をさらに山手へ進むと、堰堤の横にかかる豊稔大橋のたもとに駐車場が。実はこの近くにもう一カ所おすすめのビュースポットがあるんです。
駐車場に車を停めて道を渡り、遊歩道を進むとさっきまでいた豊稔池遊水公園が見えてきました。さらに進むと堰堤を横から眺められる場所、そしてアーチ構造が上から見える場所に出ます。記念碑があったところとダムを挟んでちょうど反対側です。またこちらの駐車場までは、JR観音寺駅からのバスも運行しています。
駐車場へ戻ると道ばたに気になる看板を発見。手書きで「まんさく」と書かれた横にコーヒーのイラストが描かれているので、コーヒーの飲めるお店でしょうか。ちょっと立ち寄ってみることにしました。
県道9号線沿いに点々と続く看板をたどって行くと、左折の指示があったので橋を渡ります。
橋を渡って道なりに進むとお店の入口に着きました。「絵手紙の里」「ろう梅の里」とは何でしょうか。
入口から坂を登った先にあったのは、看板同様なんとも手作り感溢れるお店でした。
お店に入ると目に入るのは大きく開けた窓。結構長い距離を登ってきたこともあって、目の前に広がる景色は抜群です。
そしてもう1つ目を引くのが、店の壁中に展示されている絵手紙。看板にあったのはこのことでした。こちらのご主人・大西さんは絵手紙作家で、現在は「全国絵手紙山びこの会」の会長を務めています。元々このお店は絵手紙のギャラリーとしてオープンしたのですが、お客さんの希望もあって喫茶店にリニューアルしたのだそう。また敷地内には、開店以来ご主人が植え続けてきたろう梅が316本もあって、早春には黄色の花を一斉に咲かせます。
おすすめメニューは、奥さんお手製のシフォンケーキとドリンクのセット。甘さ控え目のフワフワシフォンに、マイルドで飲みやすいコーヒーが良く合います。びっくりするほど大きな器に山盛りになったかき氷も人気。のんびりとした空間で、心癒されるひと時を過ごすことができました。
 
一休みした後は、道を県道8号線との分岐まで戻って今度は徳島方面へ進んでみます。しばらく進むと「水車」の看板が。
 
実はこちらは、豊稔池堰堤がある五郷地区にかつてあった水車小屋を復活させたもの。案内看板に従って進むと、川沿いで回る大きな水車が見えてきました。
水車の直径は3m。昔と同じく、谷川から引いてきた水で回っています。小屋の中には米や麦をついたり、ソバを粉に引いたりする石臼が。水車小屋の見学は年中無休でいつでもOKです。
そして水車小屋の隣には、東屋とピザ釜までありました。一連の施設を作ったのは、地元に活気を取り戻そうと集まった「五郷里づくりの会」の皆さん。ほとんどを手作業で作り上げたというから驚きです。
 
こちらでは水車小屋で引いた地元産のソバを使ったソバ打ち体験や、ピザ作り体験などを開催しているそう。五郷地区を巡る里山歩きツアーなども主催しているので、詳しくはお問い合わせを。
 
日本唯一の石積みマルチプルアーチダム・豊稔池堰堤とその周辺の五郷地区も魅力たっぷりでした。次に来るときはソバ打ちやピザ作りも体験してみたいと思います。
 
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豊稔池堰堤(ほうねんいけえんてい)(豊稔池遊水公園)
住所   香川県観音寺市大野原町田野々
電話番号 0875-23-3933(観音寺市観光商工課)
     0875-54-2035(豊稔池土地改良区事務所)
https://www.city.kanonji.kagawa.jp/soshiki/21/334.html
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ギャラリー茶房 まんさく
営業時間 9:00-日没
定休日  水曜日
住所   香川県観音寺市大野原町田野々341-21
電話番号 0875-54-2948
※昼定食は電話予約での受付になります。
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五郷水車
住所   香川県観音寺市大野原町有木
電話番号 0875-54-4765(五郷里づくりの会)
http://gogou.jp/
 

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