建築女子部 高松市

建築女子部 瀬戸内海歴史民俗資料館

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香川県には丹下健三が手掛けた県庁舎をはじめとする、戦後のモダニズム建築がたくさんあります。その中でも瀬戸内歴史民俗資料館は、昭和49年度日本建築学会賞(作品賞)をはじめ第1回公共建築優秀賞、DOCOMOMOJapanによる「日本におけるモダン・ムーブメントの建築164選」など数々の賞に選ばれ、高い評価を得ている名建築です。今回はそんな名建築を訪ねてみました。
モダニズム建築とは、鉄やガラス、コンクリートに代表される工業製品と、技術を全面に出してつくられるのが特徴で、戦後1950~1960年代にかけて、香川県にも多くのモダニズム建築が生まれました。
 
瀬戸内歴史民俗資料館は1973年に完成。高松市と坂出市にまたがる山「五色台」にあります。石積み打ち放しコンクリートで構築された建築は、瀬戸内海と豊かな自然に溶け込むように調和し、まるで山城のよう。用途としては瀬戸内海の民俗・文化を展示する広域資料館なのですが、建築としても一見の価値があります。職員の方によると、最近は遠方からわざわざ建築を見に来る人も増えているとか。
現地に立ってまず驚くのは、緻密で美しい石積みの外壁。設計を担当した元香川県職員(のちに建築家としても活躍)の山本忠司は、晩年高松市牟礼町にアトリエを置いた芸術家、イサム・ノグチとのインド旅行でこの建築の構想を得たといいます。特徴的なのは、建築の素材に整地のために掘り起こした石を使っていること。周囲の景観に馴染み、ずっと前からそこにあったような、独特の風格をたたえた建築です。
こちらは入り口のガラス扉。四角い取手は鉄製でモダンなデザインが印象的です。重厚な外観の中に、手仕事の温かさが感じられます。
 
エントランスホールから展示室へ。こちらも石とコンクリート、ガラスの組み合わせが美しく、モダニズム建築らしい印象です。丹下健三が手がけ、1958年に完成した香川県庁から15年後に完成した瀬戸内海歴史民俗資料館は、より地域色を強く反映した建築といえるかもしれません。
中には漁船や網、船大工用具など、瀬戸内の暮らしの中で使われてきた民具がたくさん展示されています。天井に吊るされているのは、志度湾に流れついたミンククジラの骨格標本。明治時代には瀬戸内でも捕鯨が行われていたそうです。
航海の安全や大漁を祈るための神棚や船絵馬、お守りなども展示されています。
ほかにも大小たくさんの展示室があり、中庭を囲むように階段で結ばれています。地形に沿って、スキップフロアのように上下しながら繋がる構造は造形的にも美しく、迷路を歩くような楽しさも感じられます。
こちらは館長室。普段は非公開ですが、特別に見せていただきました。石垣と竹が織りなす日本庭園のような眺めで、何とも心落ち着く空間です。
館長室の一角に資料館の模型が置いてありました。瀬戸内海を借景に、周囲の自然と一体化していることがよくわります。山本忠司は身長187㎝で元オリンピック選手、世界で活躍するトップアスリートだったとか。今もなお愛される建築が、瀬戸内海を借景に圧倒的なスケール感を誇るのもうなずけました。
最後に館内で見つけたちょっとおもしろいものをご紹介します。
こちらは、徳島県海陽町で採取された、蟹の甲羅に人面を描いたお守りです。トゲトゲがあるものには「魔除け」効果があるとして古くから民家の玄関などによく飾られていたんだとか。シュールな表情がいいですね。
こちらは展示室から屋上へ続く外階段。天国への階段みたいです。空の果てへと続く感じがかっこよく、屋上へ登ると視界が開けます。晴天に行くと絶景が楽しめます。
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瀬戸内海歴史民俗資料館
営業時間 09:00-17:00(入館は16:30まで)
定休日  月曜日(月曜休日の場合、原則としてその翌日)・年末年始
住所   香川県高松市亀水町1412-2
電話番号 087-881-4707
入館料     無料

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