ぶらり、街さんぽ 小豆島町

  • line
暑い夏にツルっと食べる素麺。素麺と聞くと夏を思い浮かべる方が多いと思いますが、実は冬が素麺づくりの最盛期ということをご存じでしょうか?

小豆島素麺の歴史は古く、慶長3年(1598年)まで遡ります。池田村(現:小豆島町)の村民がお伊勢参りの行き帰りに三輪(奈良県桜井市)に立ち寄り、素麺づくりの技術を島へ持ち帰り伝えたとされています。当時、小豆島では素麺づくりに必要である良質な小麦と胡麻が栽培され、沿岸では島特産の天然塩がとれる塩田が広がり、そして豊かな湧水がいくつもありました。加えて、冬には空気の澄んだ瀬戸内海からの寒風が吹くことや、雨が少ないため天日干しには適しているなど、素麺づくりにとって恵まれた自然条件が小豆島にはあったのです。
そこから時は流れ、おおよそ400年以上続く小豆島手延素麺。
現在、小豆島には「小豆島手延素麺協同組合」があり、現在74軒(2022年2月時点)の製麺所が伝統的な製造工程と細かな製造基準を順守し、小豆島手延素麺「島の光」を製造し、共同販売しています。
今回は、池田港から車で5分ほどの場所にある「小豆島手延そうめん館」で製造過程を見学させて頂きました。「道の駅小豆島ふるさと村」と隣接する「小豆島手延そうめん館」は、工場がガラス張りになっており、製造の様子を自由に見学することができます。(天候や季節によっては製造していない場合があります。)
今回は「小豆島手延そうめん館」の職人さんでいらっしゃる、西山英利さんに密着させて頂きました。

素麺づくりは、以下の行程で作られます。
①おで作業
②いたぎ作業
③ほそめ、こなし作業
④かけば作業
⑤小引き(こびき)作業
⑥門干し(かどぼし)作業
⑦乾燥作業
⑧小割(こわり)
⑨結束
⑩箱詰め その後検品など 

では最初から見せて頂いて…と思ったのですが、素麺づくりはとても朝早く、西山さんの場合はなんと朝4時からスタートするとのこと。は、早い…!!
今回は「④かけば作業」から見学させて頂くことにしました。
 
「④かけば作業」に入る前の工程としては、まず初めの「①おで作業」。小麦粉に塩、水を入れて混ぜ合わせるいわば生地づくり。ただ毎日決まった量を混ぜるのではなく、その日の天候や湿度を見て、塩加減や水の量を変えているそうです。日が昇る前から天候とのにらめっこ。
次に「②いたぎ作業。」板切りともいわれるこの作業は、練られた大きな生地を円形にして渦巻き状にしていきます。続く「③ほそめ・こなし作業」では、生地を機械でぐる~っとホースのように桶に巻いていきます。この時に小豆島素麺の特徴である純正ごま油を表面に塗るのですが、こうすることによって麺の表面が滑らかになりはがれやすくなるそう。また、ごま油を塗ることで、酸化やカビの発生を防ぐ効果もあります。
 
・・・と以上の過程を早朝から進め、ただいま朝の9時過ぎ。
「④かけば作業」から実際の作業を見せて頂きます。(今回は特別に許可を頂き工場の中に入って取材しております。実際はガラス越しの見学です。)
なにやら機械に囲まれている西山さん。「かけば機」と呼ばれる大きなミシンのような機械を2つ同時に動かしています。1つのかけば機に対し、2つの桶から同時に麺を通して、2本の棒に生地を八の字にかけていきます。

 
1秒たりとも手や足が止まることはなく、その俊敏な動きは思わずこちらも息を止めて見入ってしまうほど。
機械を動かしているのは当然なのですが、麺の太さや乾燥具合に常に目を配り、時には手で太さを調整しています。まるで子供のお世話をしている親のよう。「かけば作業が一番忍耐のいる作業ですね」と西山さん。目も回るようなこの作業を約2時間休みなく続けます。根気と集中力のいる作業です。
生地を寝かせるための「寝びつ」と呼ばれる箱に入れられた生地は、おおよそ2時間熟成されます。
⑤「小引き作業」
およそ2時間熟成された生地は、読んで字の如く小さく(少し)引き伸ばされます。
機械で自動的に伸ばしている…わけでは決してありません。熟成具合(麺がどれくらい伸びているか)や湿度を見て、伸ばす長さを判断します。麺はいわば生き物と同じ。毎日同じように熟成するわけではなく、温度や湿度の変化によって熟成の進みは変わってきます。
一見、機械が動いているところだけを見ると単調な作業に見えるかもしれませんが、注意を払うことがとても多く、手も頭もフル回転の状態。引き伸ばされた生地は、もう一度寝びつの中に戻され、さらに熟成を進めます。寝びつの中は、濡れた布巾で拭くことによって、湿度が調整されています。
⑥「門干し作業」
熟成が進んだ麺を機械で伸ばし、「ハタ」と呼ばれる乾燥台に引っ掛けていきます。
もちろんここでも、麺の状態と外の湿度や風を鑑みて、伸ばす長さを決めていきます。計算式があるわけではないので、ここでも職人の経験と技が光る作業です。
奥様と息の合った作業で、しゅるしゅるっと細く伸ばされた麺が次々とハタに掛けられていきます。まだこの段階では麺は薄いクリーム色のように見えますが、色の変化はこの後のお楽しみです。
⑦乾燥作業(外)
素麺づくりと聞くと、この光景を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
寒空の下、凛と並ぶ「ハタ」。太陽の光が差し、そっと吹き抜ける海風に揺れる麺は、なんとも美しい光景です。
きれいだな~と思って私が眺めている間も、バタバタと忙しく動き回る西山さん。
次のハタを出しては前のハタを引っ込めたり、風の向きを読んでハタの向きを変えたり。
そう、乾燥は素麺づくりの鬼門!
乾燥が進むと麺は縮む為、ハタの高さをうまく調整しないと麺がぷつっと切れてしまうのです。なんでも昔は、麺の乾燥具合を見守る「ハタ守り(もり)」という職人もいたのだとか。『ハタ守りが出来たら素麺づくりの一人前』といわれるほど、乾燥は最も重要な工程というわけです。
美しいこの伝統的な光景も、静かな自然との闘いが繰り広げられていることを知りました。
 
 
⑦乾燥作業(屋内)
天日干しの後は、ハタを屋内に入れてさらにじっくりと時間をかけて乾燥を進めていきます。外でいっきに乾燥させない理由としては、冬の空気は乾燥しているため、外だけで乾燥させると表面だけが乾いてしまい中まで乾燥が進まないため、屋内で時間をかけて乾燥させていきます。
部屋中がカーテンのような素麺でいっぱいになり、なんとも幻想的な光景です。
ここで、西山さんご夫妻はなにやら2本の菜箸のようなもので麺を触っています。
これは「箸入れ」と呼ばれる作業。この長い箸を麺の間に差し込み、くっついている麺と麺を剝がしていきます。なんとも細かい作業ですが、シャっと箸が麺を擦る音が心地よいです。
気付くと、先ほどまでクリーム色だった麺はきれいな白色になっています。乾きが進むと、クリーム色から白色へ変わっていくそうです。不思議ですね。

 

 
やっとここで休憩かなと思いきや、この間も乾燥具合を見てハタの高さ調整をしたり箸入れを適宜行ったりと、片時も目を離すことはありません。
この後、乾燥を終えた麺は所定の長さに切られ、「島の光」で決められている太さや重さ、見た目のきれいさなど、厳しいチェックをして箱詰めされていきます。ようやく完成です。
普段、とても手頃で気軽に食べられる素麺ですが、こんなにも手間暇がかかり、繊細な工程を経て作られていることを初めて知りました。
それほどまでに、自然と密接している素麺づくり。
歴史と共に培ってきた職人の経験と技術が、伝統的な味わいを守り続けていることを知りました。
 「僕が他の製麺所に行っても同じ素麺は作れないんです。」同じ小豆島でも、山奥の製麺所と海沿いの製麺所では湿度や風も違うため、その環境を見極めて作るには、長年の経験の積み重ねが必要なのです。

それほどまでに、自然と密接している素麵づくり。
歴史と共に培ってきた職人の経験と技術が、伝統的な味わいを守り続けていることを知りました。
今回伺った「小豆島手延そうめん館」では、見学の他に箸わけ体験(要予約)なども行っています。また、併設の食事スペースでは手延べ素麺を食べることが出来ます。
このきれいな白色!艶があってとてもきれいです。
のどごしが良く、しっかりとした弾力があるので食べ応えがあり、とても美味しいです。
 
見て、学んで、食べて。
小豆島の歴史ある素麺の世界をどっぷりと体験することが出来た1日でした。
 
 
*********
小豆島手延そうめん館
香川県小豆郡小豆島町室生1-1
電話:0879-75-0044
 
小豆島手延素麺「島の光」の購入・お問合せ
小豆島手延素麺協同組合
電話:0879-75-0039
http://www.shimanohikari.or.jp/

同じテーマの記事