さぬきのてづくり 高松市

さぬきの手づくり 高松盆栽の郷

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樹木を鉢に植え、その中に自然から切り取ったかのようなミニチュアの風景を再現する盆栽。高度な技術を駆使し、長い時間をかけて作られる鉢の中の情景はまさに芸術品です。近年では海外にも愛好家が増え「BONSAI」の名で知られるようになってきました。
その盆栽ですが、実は香川県高松市の西部に位置する鬼無・国分寺地区が日本一の松盆栽生産地なんです。2020年4月1日に盆栽PRの新拠点「高松盆栽の郷」がオープンしたので、早速行ってみることにしました。
場所はJR予讃線・端岡駅から徒歩約20分のところ。車だと高松自動車道・府中湖PAスマートICから約10分です。
施設に入って驚かされるのは盆栽の展示スペース。広い敷地内に約1万点もの盆栽がずらりと並ぶ光景はまさに圧巻。全て値段が付いていて購入できます。
その種類も、黒松や五葉松、国分寺発祥の錦松などの「松盆栽」はもちろん、サンザシや楓などの「雑木盆栽」まで多種多様。大きさもかわいらしい小鉢から、大人一抱えもある大きな物まで様々です。一から育ててみたい方向けに苗まである充実ぶり。
こちらの黒い覆いが掛けられているコーナーにあるのは、直射日光に弱い植物の鉢だそうです。
こちらの鉢は複数の植物を組み合わせた「寄せ植え」。中央に水が流れていて、深山の湧き水スポットを思わせます。
展示スペースを一回りした後は建物の中へ。こちらの研修室では、気軽に盆栽づくりに触れることができる「苔玉作り体験」ができます。
好きな植物を選んで根元に土の玉を作り、表面を苔で覆って糸を巻くだけで完成。子どもから年配の方まで誰でも簡単にできます。完成までの時間は約30分。前日までに予約すれば参加できます。また体験以外にも、本格的な盆栽づくりを学ぶ研修もあるので、興味のある方はお問い合わせ下さい。
また建物の奥には、剪定用のハサミや針金などの素材に肥料、砂、苔まで、様々な盆栽のお手入れに必要な道具類が販売されていました。購入に際して、専門家のアドバイスを受けられるのがポイント。品揃えはこれからどんどん増やして行く予定だそうです。
さらに盆栽のシールと、シャツなどの布地にプリントできる盆栽シートというオリジナルグッズも。3種類の盆栽缶バッジは、商品を購入するともらえます。
 
知っているようで知らなかった盆栽の魅力を再認識させてくれる高松盆栽の郷。展示即売会やオークションなどのイベントも開催される予定で、盆栽のお手入れについての相談も気軽にできるので、ぜひ訪れてみて下さい。
次に訪れたのは神社。高松市国分寺町の高台に日本でただ一つの盆栽神社があると聞き、お参りに行ってきました。急な坂道を車で進むこと約10分、山中の谷あいに鎮座している神社に到着。祀られているのは、樹木を司る男神・久久能智神(くくのちのかみ)と、草花を司る女神・草野姫神(かやのひめのかみ)で、まさに盆栽にぴったりの神様ですね。
移動途中でちょっと変わった風景を見つけました。一見普通の畑のようですが、生えているのはなんと松。そうこれは盆栽を育てる畑なのです。このエリアでは、様々なサイズの松が畑で育っている様子を見ることができます。
また高松盆栽の郷の近くには、盆栽生産者の方が営む盆栽園が数多くあります。せっかくなので、そちらにもお邪魔しました。1軒目は「神髙松寿園(かんだかしょうじゅえん)」。高松市鬼無町の盆栽通り沿いにある園です。隣りに畑を備えた広い園内には、数え切れないほど多くの盆栽がずらり。各々値札がついていて、気軽に購入することもできます。
園内の奥で訪れる人を圧倒しているのは、名物の松「土俵入り」。地面を這うように4m以上も伸びた枝が庭を覆う堂々とした立ち姿は、名前通り力士の土俵入りを思わせます。
見所がいっぱいですが、中でも人気なのがこの「瑞宝殿(ずいほうでん)」。2代目の神高与一さんが盆栽の功労で勲六等瑞宝章を受けた記念に造った園で、中ではひと味違う松盆栽の名品の数々を鑑賞できます。
瑞宝殿の中でも一際目を引くのが「大隈重信候遺愛の黒松」。大隈重信が愛したと伝えられているのも、納得の存在感です。
この老舗盆栽園を切り盛りするのは、4代目の神髙恵二さん。「盆栽は初めて選ぶ時ほど迷いがちだけど、自分で見て気に入ったものが1番いい。長く大事にしていただきたいですから」とその言葉には、子どものように育てている盆栽への愛情が溢れていました。
最後にもう1軒。こちらも鬼無にある盆栽園「中西珍松園(なかにしちんしょうえん)」です。門を入ると、目の前に広がるのは見事な日本庭園。よく見ると樹木の代わりに配置されているのは盆栽です。これは盆栽の新しい楽しみ方を提案する庭で、植えかえることができない庭木の代わりに、季節毎に違う盆栽を配するというコンセプト。春は桜、秋は紅葉など、その季節に合った植物を愛でることができるって贅沢ですよね。希望があれば庭造りのお手伝いもしてくれるそうです。
庭園の奥には、通常よりかなりゆったり目のスペースを取った展示コーナーが。これは訪れる方にゆっくり盆栽を楽しんで欲しいという心配りから。手前右に並んでいるのは、この園を代表する「寿」という種類の黒松。3代目の中西春男さんが産みの親で、短い葉が密にまっすぐ伸びるのが特徴です。
こちらは津山ヒノキを複数配したまるで森の一場面のような作品。洋風の部屋にも似合いそうな、かわいく手頃な価格の鉢も充実していました。
5代目の中西陽一さん。先入観に捕らわれず、盆栽の世界に新しいアイデアをどんどん採用されています。先述した盆栽を取り入れた日本庭園や、ゆったりした展示場も中西さんの発案。2020年秋には、展示場内に盆栽のワークショップができるスペースが完成予定だそうなので、更なる新しい展開が楽しみです。
 
ハードルが高いように思っていた盆栽ですが、基本を押さえれば自分でも長く世話をしていけそうな気がしました。なにより、愛情をかければかけただけ育つというのが魅力的です。
200年を超える盆栽づくりの歴史と魅力に触れることができました。
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高松盆栽の郷
営業時間 8:30〜17:00
定休日  年末年始
住所   香川県高松市国分寺町国分353-1
メールアドレス ja_bonsai_order@ja-takamatubonsainosato.com
https://takamatsu-bonsai.com/
入場料     無料、苔玉づくりは2,000円〜
所要時間 苔玉づくりは約30分(前日までに要予約・担当が不在の場合は休み)
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盆栽神社
住所   香川県高松市国分寺町新居
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神髙松寿園(かんだかしょうじゅえん)
営業時間 日の出〜日没
定休日  無休
住所   香川県高松市鬼無町山口428-1
電話番号 087-881-2852
http://www.kinashi-bonsai.com/shojuen
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中西珍松園(なかにしちんしょうえん)
営業時間 9:00〜17:00
定休日  無休
住所   香川県高松市鬼無町佐藤148
電話番号 087-882-0526
http://chinshoen.jp
 

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