ぶらり、朝さんぽ 三豊市

仁尾の町並み

  • line
香川県の西、三豊市にある父母ヶ浜は絶景で知られるスポットですが、その一帯の仁尾(にお)は、かつて海運業や製塩業で栄えた地域。町の中心部には今も瓦屋根の昔懐かしい町並みが残っています。そんな仁尾の町並みを朝に散策してみました。
まず向かったのは「伊藤製パン」。車がやっと通れるぐらいの細い路地にある、昔ながらのパン屋さんです。1948年創業で、木枠のサッシと小さなガラスカウンターは今も現役。毎朝8時頃から、数種の菓子パンが店頭に並びます。
店主の伊藤千鶴子さんのお義父さんが始められたというこのお店。千鶴子さん曰く、創業当時はまだパンが珍しく、地域の人に「食パンってこんな食べものだよ」と味見してもらっていたそう。その後、仁尾の町が賑わっていた時代にはなんと7店ものパン屋があったそうです。田植えやみかんの収穫の合間のおやつとして、菓子パンを買い求める人が多かったとか。柑橘の産地としても知られる、仁尾らしいエピソードです。
毎朝4:30から仕込みを始めるという千鶴子さん。
あんこやカスタードクリームの入った揚げパンは一番人気。かぼちゃやさつまいもなど、やさしい味わいの餡が入ったパンもあります。
取材時には香川県の特産品でもある、そらまめ餡の入った揚げパンもありました。そらまめの風味がふんわりと漂い、小ぶりなサイズでぺろりと食べられます。
地元の人からの信頼も厚く、「これからもお店続けてよ」の声に応えて、日々パンを仕込む千鶴子さん。物腰やわらかな人柄と挨拶がわりの「おなかおきとん?(「おなかおきる」は「おなかいっぱい」という意味の方言)」という讃岐弁のおしゃべりも、この店の魅力の一つです。
続いて向かったのは覚城院(かくじょういん)。高台にある、石垣が特徴的なお寺です。
それもそのはず、このお寺のある場所は、古くは仁尾城というお城でした。さっそく石段を登り、住職の森さんにお話を伺います。


もともと覚城院は現在の場所より南にあり、約800年~1,000年前後に創立したとされる由緒ある寺院でした。その後、1570年代に土佐の長曾我部(ちょうそかべ)氏に攻められ仁尾城が陥落したのちに、城の跡地に移築して、現在の場所になったのだとか。
仁尾城が陥落したのは3月3日、桃の節句。本来であればひな祭りの行われる日ですが、陥落の日に祝い事はできない、ということで旧暦の8月1日(八朔・はっさく)に男女合わせて子どもの成長を願う行事が行われるようになりました。これが、町中の家々の軒先に人形を飾る「仁尾八朔人形祭り」へと発展したそうです。
仁尾城跡に移築した覚城院は、今から100年ほど前に焼失してしまい、本堂などの現存する建物は地域の名士である塩田忠左衛門によって再建されたのだそう。塩田忠左衛門は製塩業で名を馳せた、香川県を代表する豪商でした。覚城院は、仁尾の歴史と深いかかわりのあるお寺なのです。

 
本尊にあたる千手観世音菩薩は、その名の通り多くの手を持つ観音ですが、覚城院にある千手観世音菩薩は“清水式”といって全国でも非常にめずらしいポーズをとっている仏像なのだそう。普段は秘仏となっていますが、イベントなどの際には公開されます。また、鬼子母神も祀られており、安産祈願のお寺でもあります。
覚城院からは、瓦屋根が連なる仁尾の町並みを一望することができます。「町におけるお寺の数はその町の裕福さを表すといわれていますが、かつて仁尾には30ものお寺がありました」と森さん。
 
多くの人にお寺に集ってほしいという想いから、日の短い冬場に合わせて境内をライトアップする企画を進めているそう。秘仏も公開予定です。森さん曰く、「父母ヶ浜で夕景を見た後に足を運んでみていただけたら」とのこと。石垣が照らされて、荘厳な雰囲気になりそうです。
次に向かったのは「仁尾蒲鉾謹製店」。古くからの路地に佇む白い建物で、小さな暖簾が目印です。近づくと天ぷら(香川県の方言で、すり身を揚げたもの)のおいしそうな匂いが漂っています。
 
 
建物の中は、天ぷら製造の作業場になっています。
原料の魚はミンチにしたあと大きな石臼ですりつぶされ、一つひとつ巻き簾で成形され、手作業で揚げられていきます。
作業台には揚げたて熱々が並び、地域の人がひっきりなしに訪れては何枚も買い求めていきます。毎週火曜と金曜には、天ぷらに加えて簀巻きかまぼこも製造されます。
(2枚目写真 提供:仁尾蒲鉾謹製店)
 
お店の方によれば「旬の魚を使うので、時期によって少しずつ味が違うんよ」とのこと。取材時には、スケソウダラとエビに加え、グチやゲタガレイ(シタビラメ)など瀬戸内の魚が原料でした。
食べるときにはトースターで焼き直したり、オリーブオイルで炒め直したりしても、揚げたてのおいしさがよみがえるそう。もちろん、冷めてもおいしくいただけます。
お土産の天ぷらを買い求め、最後に訪れたのは「KAKIGORI CAFEひむろ(以下ひむろ)」。仁尾からは少し離れた、父母ヶ浜エリアにあるお店です。散策後にリフレッシュするにはぴったりのお店です。
今回いただいたのは「もったいないかき氷」。仁尾の食料品店で余ったり、見た目が傷ついて店頭に出せなくなったりしたフルーツを使ったかき氷です。しかもこのかき氷、売り上げの一部は父母ヶ浜の清掃ボランティアのための基金に使われるのだそう。
その時々で使うフルーツが変わる“日替わり”なのも、楽しみの一つです。
この日はスイカ・パイナップル・メロンと中に水切りヨーグルトが入っていました。
フルーツはどれも香り高くジューシー。水切りヨーグルトの甘酸っぱさと濃厚さで、最後までおいしく食べられました。
 
「ひむろ」では地産のフルーツにもこだわっており、仁尾産のレモンを使ったかき氷は、初夏~夏にかけての限定販売。レモンに酸味とはちみつの甘さが爽やかな人気商品です。
ほかに、三豊市の財田(さいた)で採れるボイセンベリーや、高瀬で栽培されるお茶を使ったかき氷もあります。
 
店内では、父母ヶ浜や仁尾に関連したグッズやお土産も販売されています。
父母ヶ浜の風景をモチーフにしたボタンなど、ここにしかないアイテムも。
地元産のフレッシュなフルーツにこだわっている「ひむろ」では、7月にはスイカや桃、8月にはブドウ、いちじく、梨、10月には栗やさつまいものかき氷が登場します。
暑い時期だけでなく、春夏秋冬それぞれに、おいしいかき氷を堪能することができます。
 
 
仁尾の町をぶらりと散策し、地元民のような気分を味わうことができました。
ゲストハウスや絶景を眺めながら楽しめるキャンプサイトなど個性的な宿泊施設が点在する三豊市。
宿泊した翌朝には、仁尾の町に出て散策してみるのも楽しいですよ。
 
-----------
伊藤製パン
※月曜日・木曜日は菓子パン/火曜日・金曜日は食パン/水曜日・土曜日は揚げパンを製造
営業時間 7:00-18:00頃
定休日  日曜日・年末年始・不定休
住所   香川県三豊市仁尾町仁尾丁347
電話番号 0875-82-2240
-----------
大寧山 覚城院(だいねいざん かくじょういん)
住所   香川県三豊市仁尾町仁尾丁845
電話番号 0875-82-2051
-----------
仁尾蒲鉾謹製店
※簀巻き蒲鉾は火曜日・金曜日のみ
営業時間 10:00-13:00頃
定休日  日曜日
住所   香川県三豊市仁尾町仁尾丁222-4
電話番号 0875-82-2288
-----------
KAKIGORI CAFE ひむろ
営業時間 夏季11:00-18:00/冬季11:00-17:00(2020年7月から当面は17:00までの短縮営業)
定休日  月曜日・火曜日(祝日の場合は営業)
住所   香川県三豊市仁尾町仁尾乙202
電話番号 0875-82-2101
 
 
 

同じテーマの記事