ぶらり、街さんぽ 高松市

昔懐かしい野外博物館 四国村

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高松市の北東に位置する屋島。源平の古戦場として知られるこの山の山麓にあるのが、野外博物館・四国民家博物館です。「四国村」の愛称で親しまれるこの博物館には、四国各地から移築復元した33の古い民家や旧跡などが保存されています。江戸から大正期にかけて建てられたもので、そのほとんどが国や県・市から指定を受けた文化財。また建築家・安藤忠雄氏や、彫刻家・流政之氏という世界的な作家が手がけた作品はもう1つの見どころです。村内を巡った後は、異国情緒あふれる異人館でお茶も楽しんでみることにしました。
四国村へは屋島山上シャトルバス「四国村」バス停を降りてすぐ。また、JR屋島駅からは徒歩10分で、琴電屋島駅からは徒歩5分で行くことができます。茅葺き屋根のうどん店・わら家の隣ですが、実はわら家も四国村の一部。最初に移築された江戸末期の茅葺き農家を店舗に使っています。
入口でチケットを購入して村内へ入ります。
入口から奥へ向かってなだらかに伸びている坂は、彫刻家・流政之氏の作品「流れ坂」。屋島に隣接する庵治地域で切り出された高級な花崗岩・庵治石を豪快に配置した坂は、木漏れ日の下で様々な表情を見せてくれます。手前の木はモミジで、秋は紅葉も美しいそう。
流れ坂から左の脇道へ入った場所には、徳島県祖谷の「かずら橋」を復元した吊り橋が。植物のつるで編まれた橋は、足下に大きな隙間がある上に一歩踏み出す毎にきしんで揺れ、スリル満点です。渡るのが恐い人や車いすの方には迂回路もあるのでご安心を。
かずら橋から続く道の先にあったのは、小豆島から移築された「農村歌舞伎舞台」。地元の人自身が役者になって演じる農村歌舞伎に使われていた建物で、今でも演劇やライブなどのイベントに利用されています。舞台の前方は広く開けていて、階段式に棧敷が設けられています。ちょうどすり鉢の底に舞台があるようです。
道が流れ坂に合流したのでそのまま進むと、いくつもの茅葺き屋根の民家が建っていました。細く曲がりくねった道沿いに家が並んだ様は、元々ここに村があったかのようです。この「旧河野家住宅」は愛媛県南部の山村にあったもの。部屋の床は全て竹でできていて、各部屋に囲炉裏があります。土間には和紙の材料・コウゾを蒸す釜も。
その先には丸い茅葺きの小屋が。この「砂糖しめ小屋」は、香川県特産の砂糖・和三盆作りに使われていた建物。建物が丸いのは、中央にある石臼(車石)を回転させてサトウキビを搾るのに腕木を牛に引かせたために、その牛がぐるぐると回りやすい形になっているというわけ。日本家屋らしくない丸い形がかわいいと、女性の撮影人気ナンバーワンの建物だそうです。屋根のてっぺんには帽子のように、サトウキビを搾った汁を貯める甕(かめ)が被せられています。
少し急になってきた坂を登ると、庭が整備された少し趣の違うエリアに出ました。奥にあったのは「四国村ギャラリー」。四国村創設者・加藤達雄氏が収集した、ヨーロッパの絵画や、彫刻・仏像・青銅器・書など幅広い美術品を展示しています。建物の設計は安藤忠雄氏で、ここを目当てに訪れるファンも多いのだそう。展示品は年に数回入れ替えがあり、訪れた時はピカソの絵が展示されていました(通常、館内は撮影禁止です)。
奥にあるバルコニーからは、高松市内と美しい「水景庭園」が一望できます。流れる水と複雑に入り組んだ階段、そして花と緑が織りなす水景庭園は、時間が過ぎるのを忘れる美しさ。庭園の一番奥まで行くと、ギャラリーの屋根の上から屋島の南嶺が顔を出します。
ギャラリーを出て進むと、木々の間から現れたのは『茶堂「遊庵」』。このお堂は土佐(高知県)から伊予(愛媛県)へ越す龍王街道にあったもので、かつて四国の古い街道沿いにはこのようなお堂があちこちにあり、街道を行き交う人やお遍路さんの接待の場として使われていました。隣には香川県で採れる石「サヌカイト」が置かれていました。叩くと金属のような音を響かせる石として知られています。堂内に祭られている石仏は、流政之氏の作品。またここから続く竹林も、人気の撮影スポットです。
再び急坂を登った先に見えてきたのは、なんと燈台。ここに移築されているのは、明治初期にイギリス人技師により設計された燈台と燈台守が暮らした3棟の退息所。石造りの建物が並ぶ様は、ヨーロッパの街角のようです。しかしよく見てみると、壁は石造りなのに屋根だけは日本瓦だったり、柱が神社の鳥居のようになっていたりと、イギリス人技師の設計図を見ながら日本の材料と職人でなんとか英式の建物を作ろうとした当時の人たちの苦労が偲ばれます。
1番右にある「旧クダコ島燈台退息所」は外観だけ洋風を真似た和風建築で、中は畳敷きです。
先ほどの燈台退息所が1番高い場所なので、後はほぼ下り道。道沿いには立派な造りの茅葺きの建物が建っています。こちらは徳島県の剣山にあった「旧下木家住宅」。豪雪に耐えてきた太い梁や柱が印象的です。
並んで建っているのは、徳島県祖谷にあった「旧中石家住宅」。手前が「隠居屋」で真ん中が主屋、奥が家畜小屋を兼ねた納屋です。年老いた親が移り住んだという隠居屋は、敷居が低くバリアフリー風になっています。
主屋と隠居屋の奥から聞こえてくる水音に誘われて進むと、見事な滝が姿を現しました。この「染が滝」も流政之氏の作品です。
竹林を抜けた先にあった立派な蔵は「旧丸亀藩御用蔵」。中は資料館になっていて、農村歌舞伎に使われた衣装や人形などが展示されていました(不定期で展示替えあり)。
蔵から道を下ると石のアーチ橋を発見。高松市国分寺町の金毘羅参詣道にかかっていた橋で、橋の下まで入ることができ、人気の撮影ポイントになっています。
流れ坂を下るとひとまず四国村巡りは終了です。所要時間は約1時間でしたが、ゆっくり巡るともう少し時間がかかるかもしれません。出口には「ティールーム 異人館」があるので、一休みしました。こちらの建物は神戸の異人館を移築したもので、表にあるポストとガス灯はロンドン西南部にあったもの。夏目漱石がイギリスに留学中、このポストの近くに住んでいたそうなのでここに手紙を入れたかも知れませんね。
室内の家具調度品は、すべてイギリスから取りよせたという約1世紀半前のアンティーク。肘掛け椅子でくつろげば、気分は貴族のようです。
おすすめは、マフィンとグルジアンティー。店内で毎日焼き上げているマフィンは、柔らかで甘くない素朴な味わい。オリジナルのグルジアンティーは、シナモンなどのスパイスが効いたエキゾチックな味でした。

また四国村入口横には、村内に入る前、目にしたうどん店・わら家が。古民家の中、たらいで食べる釜あげうどんは格別です。

緑いっぱいの四国村をゆったりと巡るのは、森林浴をしているような気分でした。四国村ギャラリーや資料館の展示替えなど季節や時期によっても見どころがたくさんあるで、ぜひまた訪れたいです。

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四国村(四国民家博物館)
営業時間 11-3月 8:30-17:30、4-10月 8:30-18:00(入村は閉村の一時間前まで)
定休日  無休(メンテナンスのため不定休あり)
住所   香川県高松市屋島中町91
電話番号 087-843-3111(公益財団法人 四国民家博物館)
入村料  大人1,000円、高校生600円、小中学生400円、幼児無料
https://www.shikokumura.or.jp


ティールーム 異人館
営業時間 3月1日-11月23日 9:30-17:30/11月24日-2月末日 9:30-17:00
定休日  無休
住所   香川県高松市屋島中町91
電話番号 087-843-3111(公益財団法人 四国民家博物館)
https://www.shikokumura.or.jp


わら家
営業時間 月曜日~金曜日10:00-18:30(18:00L.O.)、土曜日・日曜日・祝日 9:00-19:00(18:30L.O.)
定休日  無休
住所   香川県高松市屋島中町91
電話番号 087-843-3115
https://www.wara-ya.co.jp

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