鉄旅 女子部 高松市

レトロなケーブルカーで八栗寺へ

  • line
高松市東部にそびえる五剣山。屋島と並んで地域のシンボルとして信仰を集めてきました。その中腹にある四国八十八ヶ所霊場第85番札所・八栗寺と麓を繋いでいる八栗ケーブルは、1964年の開業以来半世紀以上に渡ってお遍路さんや地元の人々に親しまれているケーブルカーです。

開業当時から受け継がれ、今も現役で運転を続けているレトロな車体は、その丸っこいフォルムがかわいいと女性にも人気。八栗ケーブルに乗って、八栗寺にお参りにでかけてみました。
八栗ケーブル登山口駅の最寄り駅は、ことでん志度線の八栗駅。徒歩だと約30分かかるので、八栗駅で借りることができるレンタサイクルがおすすめ。結構坂が急ですが、電動アシスト付きなので約10分で到着できます。
坂を登り切った正面に見えているのは五剣山。山の名前は、弘法大師がこの山で修業中に、天から5つの剣が降ってきて、それを中腹に埋めたことに由来すると伝えられています。かつて文字通り5つの峰がありましたが、江戸時代の1707年(宝永4年)の大地震で、東の峰が中腹から崩壊し、現在は4つの巨岩が並んでいます。車で来る場合は、無料駐車場があるのでそちらを利用しましょう。
八栗ケーブル登山口駅に到着。右側がケーブルカーのホーム、切符売場や改札は左側の建物にあるのでそちらへ向かいます。運賃は往復で買うとお得。片道だと下りが上りより少し安くなっています。
改札を通ってホームへ入ると、青い車体の2号が待っていました。駅員の方によれば、八栗ケーブルの開業は東海道新幹線と同じ1964年で、初代新幹線の0系と同じ日立製作所製。開業時は新幹線と同じ白に青いラインに塗装されていたそうです。そういえばライト周りや鼻先の丸い感じがどことなく初代新幹線に似ている気がします。
ケーブルカーは線路が斜めなので、車体も常に斜め。そのため、車体やホームもそれに併せて階段状になっています。ドアや窓が段々に配置され、車内に傾斜があるのが、ちょっと不思議な感じです。
発車時刻になったので、いよいよ山上駅へ向かって出発。ケーブルカーは、高低差167m、最大勾配17度もある坂をものともせずにどんどん上って行きます。上りの車内で流れている民謡のような曲は、弘法大師が作者といわれている「いろは歌」なのだそう。
途中線路が二股に分かれていて、そこで下りの車両とすれ違います。思ったよりも近い距離ですれ違うので、キレイな写真が撮れるおすすめポイントでもあります。
山上駅が見えてきました。発車から約4分で到着です。ちなみにケーブルカー自体には動力は積まれてなく、山上駅にあるモーターでワイヤーロープ(ケーブル)を巻いて車体を引っ張り上げています。その際、井戸の“つるべ”のように下り車両の重さを利用することで、効率の良い運用を可能にしています。
山上駅を出ると「八栗寺」と刻まれた石柱の隣に鳥居が立っていました。どうしてお寺なのに鳥居なのでしょうか?八栗寺は、境内にインド伝来の天尊(てんそん・神様のこと)である「お聖天様(歓喜天・かんきてん)」が祀られている、とお寺の方に伺いました。実は、仏教寺院であっても神様の場所には鳥居が置かれるため、八栗寺には鳥居があるというわけなんです。
案内板に従って進むと、参道に張りだした岩と空を覆う木々のせいもあってか、空気がひんやりと感じられて身が引き締まります。
朱塗りの多宝塔や、弘法大師像の置かれた大師堂を過ぎると、正面が聖天堂です。
聖天堂の右に建っているのが八栗寺の本堂。まずは本堂にお参りします。本堂には弘法大師作の本尊・聖観自在菩薩が祀られています。屋根や幕に描かれているのは三つ葉葵の紋は、戦国時代に焼失した本堂を高松藩初代藩主の松平頼重公が再建し、八栗寺を祈祷所としたことに由来しています。松平頼重公は、水戸徳川家の出身で、水戸黄門で有名な徳川(水戸)光圀の兄で、徳川家康の孫にあたります。高松松平家は代々、八栗寺を深く信仰していました。
そしてこちらがお聖天さま(歓喜天)が祀られている聖天堂。極彩色に塗られたエキゾチックな建物が印象的です。またお堂の周りある大根と巾着を型取った意匠にも注目。お聖天さまの好物の大根は良縁成就や身体健康、さらには夫婦仲よく末永い一家の和合などを表しています。また、巾着は商売繁盛や福徳財宝の獲得等のご利益を表したもので、その名前通り人の歓びを自らの喜びとするお聖天さまのシンボルになっています。
また目線を上に向けると、2つのお堂の後ろにそびえ立つ五剣山が。山頂が間近に迫ってくるようなその風景は圧巻です。
 
本堂の左の階段を上った先にある「中将坊堂」は、五剣山の修験者が修行の末に神通力を得たという天狗を祀ったお堂。
 
お堂のそばには奉納された高下駄がありますが、奉納した下駄が汚れているのは中将坊が願いを叶えるために、夜中に駆け巡ったためと言われているのだそう。
 
境内を一通り巡ったあとは、ご利益にあずかるべくお守りを買うことにしました。女性に人気なのが、お聖天さま縁の巾着に大根をあしらった良縁成就のお守り。同じく巾着と大根や、中将坊の天狗面が描かれた絵馬も多く奉納されていました。
本堂の前から延びる道を二天門から門前町へ進んだ先にあるのが「お迎え大師展望台」。表参道を歩いて参拝する人々をお迎えするということから「お迎え大師」と名付けられた弘法大師像は大師堂の本尊の摸刻です。
こちらからは屋島や高松市内を一望できる、素晴らしい風景を眺めることができます。またこちらの道は歩いて登る際の表参道。大師堂にあった弘法大師と同じ姿の像が、参拝客を迎えてくれます。
お参りを終えて再び山上駅へ。発車時刻は15分刻みなのであまり待たずに乗車できます。
下りは赤色の1号。車両の先頭から線路を見下ろすと、登ってきた時よりかなり急な印象を受けます。車内では昭和39年製の日立のプレートを発見しました。
 
登山口駅に到着したら、駅前のお店で一休みしましょう。こちらの高柳食堂さんは、八栗ケーブル開業時から営業している老舗です。いただいたのはガラスの器がなんとも涼しげなところ天。
海藻の雑味がなくつるりとしたところ天は、77歳になる高橋さんが地元の海で採れたテングサを手間ひまかけて水にさらして仕上げた極上品。香川県風の酢醤油とカラシを使った味付けも、酸っぱ過ぎず辛すぎないマイルドな味わいでした。また関西風の黒蜜もあるのでお好みでどうぞ。またところ天は夏限定で、冬場はにし貝やイイダコのおでんがおすすめです。
 
いつもの鉄道とはちょっと趣向を変えて向かってみた、ケーブルカーの旅。レトロな八栗ケーブルカーはもちろん、見所盛りだくさんの八栗寺や周辺のお店もゆったりと満喫することができました。
-----------
八栗ケーブル株式会社
営業時間 7:30-17:15(15分毎に運行・毎月1日5:00-)
定休日  無休
住所   香川県高松市牟礼町牟礼
電話番号 087-845-2218
http://www.shikoku-cable.co.jp/yakuri/
運賃   大人(中学生以上)往復1,000円(上り600円、下り500円)、小学生往復500円(上り300円、下り250円)
所要時間 約4分
 
第85番札所 五剣山観自在院 八栗寺
納経   7:00-17:00
定休日  無休
住所   香川県高松市牟礼町牟礼3416
電話番号 087-845-9603
http://yakuriji.jp
 
高柳食堂
営業時間 8:00-14:00
定休日  無休
住所   香川県高松市牟礼町牟礼3372
電話番号 087-845-1818
 
ことでん八栗駅レンタサイクル
貸出時間 8:30-19:00
定休日  無休
住所   香川県高松市牟礼町牟礼
電話番号 087-831-6008(ことでん運転営業所)
http://www.kotoden.co.jp/publichtm/kotoden/new/2013/rent_cycle/index.html
料金   3時間500円(延長1時間につき100円・別途貸出保証金として3,000円、返却時にご返金)

同じテーマの記事

当サイトでは、利便性の向上と利用状況の解析、広告配信のためにCookieを使用しています。サイトを閲覧いただく際には、Cookieの使用に同意いただく必要があります。詳細はクッキーポリシーをご確認ください。

同意する