注目!香川のパワースポット 善通寺市

総本山善通寺の宿坊で宿泊&精進料理のランチを楽しむ

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香川県善通寺の総本山善通寺は、弘法大師空海の御誕生所であり、四国八十八カ所霊場の第75番札所として古くから多くの人の信仰を集めてきました。総本山善通寺には宿坊が併設されていて、お遍路さんだけでなく一般の参拝客の方でも宿泊が可能。宿泊した翌朝には朝のおつとめ(法要)に参加することもできます。さらに、香川県産の食材を中心に新鮮な旬の素材を用いた精進料理のランチコースも人気と聞き、訪ねてみることにしました。
総本山善通寺へは、高松市街からだと車で丸亀方面に約1時間。
高松自動車道を利用する場合は、善通寺インターで降りて車で約10分。
JRを利用する場合は、土讃線善通寺駅から徒歩約20分です。
 
 
境内は誕生院(西院)と伽藍(がらん・東院)に分かれています。
 
誕生院は、弘法大師空海の誕生の地です。
中央にあるのが御影堂(みえどう)。
父方の佐伯家の邸宅跡に建てられているお堂で、中には弘法大師直筆の御影(みえ)・〔自画像・秘仏〕が祀られています。
 
伽藍は、唐から帰国した弘法大師が佐伯家菩提のために建立したと伝えられる寺域です。本堂である金堂は、長安の青龍寺を模して建立した善通寺が元となっています。永禄元年(1558年)の兵火によって、創建当初の伽藍諸堂は全焼してしまいましたが、戦国時代が終わり、讃岐の大名をはじめとした周囲の援助により、再建が進み、現代に至ります。善通寺とは、弘法大師の父佐伯善通(よしみち)の名から取ったもの。真言密教の道場とされ、現在では金堂、五重塔、釈迦堂などが建ち並んでいます。
明治以降に誕生院と伽藍を統合して現在の「総本山善通寺」となりました。
 
今回は最初に精進料理のランチをいただくことにしました。
さっそく、仁王門から誕生院に入り、左側にある宿坊「いろは会館」内の食堂へ。
ランチは懐石仕立てのコースで、食前酒に始まり甘味まで全14品です。
(写真:総本山善通寺提供)
 
料理長の鈴木さんによれば、精進料理のため動物性の食材を用いておらず、味付けに使うのも昆布だしがメイン。そこにしいたけや野菜のだしも組み合わせて、味に深みを出しているそう。
また、五辛(ごしん)と呼ばれる香味野菜(にら、ねぎ、にんにく、らっきょう、玉ねぎ/五葷(ごくん)ともいう・地域や時代によって多少異なる)や唐辛子などの香辛料も使っていません。
 
白ごまで作ったごま豆腐に黒ごま餡をかけた先付(さきづけ)は、もっちりと濃厚な味わい。
春が旬の海藻、あらめの煮物やセリのお浸しなどに季節を感じます。
(写真:総本山善通寺提供)
 
八寸(はっすん)には、こごみや葉わさび、つくしなど、春ならではの山菜も。
一つひとつ丁寧に調理された色とりどりのおかずに思わず目移りしてしまいます。
御造りのように見えるのは、実は刺身こんにゃく。
一瞬「マグロ!?」と思ってしまうような鮮やかな赤のこんにゃくは、体に無害な酸化鉄で色を引き出したもの。普通のこんにゃくよりしっかりした歯ごたえが特徴です。
他にも香りが華やかな柔らかめの柚子こんにゃくに、四万十産のあおさのこんにゃくなど実に風味豊か。魚の御造りとは違いますが、食べ応えのある一品です。
 
吸い物や天麩羅、焼物にも山菜や筍など春らしい味覚が取り入れられています。
 
精進料理においては肉や魚を使わない分、大豆は重要なたんぱく源。
そのため、こちらでは豆腐や大豆ミート(大豆を肉のように加工したもの)を比較的多く使っているのが特徴です。
(写真:総本山善通寺提供)
 
口替わりの汲み出し豆腐は、大豆とにがりから作る自家製品。やわらかな豆腐にそば米の香る餡がよく合います。
豆腐の味噌漬けは、京都の白味噌と香川県の観音寺市でつくられた白味噌の合わせ味噌に2~3週間漬けて作るといいます。チーズのような食感で、大豆と味噌の旨みがぎゅっと凝縮した一品です。焼き上げることで、さらに香ばしい風味が際立っています。
 
椀物には善通寺市特産のダイシモチ麦と里芋のまんじゅうに、大豆ミートのそぼろ餡仕立て。訪れたのが3月だったので春らしく仕上げに蕨(わらび)が添えられていました。
ダイシモチ麦が入ったまんじゅうはモチっとして食べ応え満点。
しいたけと昆布のだしで奥行きのある旨みを感じます。
 
食事のごはんは、1人分ずつ釜で炊いた炊き立てをいただけます。こちらもダイシモチ麦入りでモチモチとした粒感がアクセントに。
 
「伝統的な精進料理の技法に則りながらも、食材を香川県産のものに置き換えたり、季節感のある食材や新しい食材をアクセント的に取り入れたりしているんです」と鈴木料理長。
 
例えば、冬瓜や夕顔で作る料理を近くの産直で出回るパパイヤで作ってみたり、ヴィーガン向けの植物性チーズを取り入れてみたりと、新しいアイデアを積極的に取り入れているそう。
 
野菜だけでなく海藻も豊富に使われていて、植物性の食材だけとは思えないほど味わい豊かですし、食感や香りも様々で食べ飽きることがありません。
最後に水菓子や甘味もあり、お腹いっぱい、大満足のランチコースでした。
 
※品数や内容は季節によって変わります
※食材調達の都合から、2名以下でのご予約は受け付けていません。1週間前までにご予約ください
 
 
この日はいろは会館に宿泊することにしました。
入ってすぐのロビーには、自動販売機やパンフレット、自由に読める書籍などがあり、情報収集にぴったり。
翌日の天気も掲示されているので、お遍路や観光にも役立ちます。
 
50室ある客室は畳敷きの和室が中心。
清潔で落ち着くお部屋です。
こちらの部屋からは誕生院や善通寺の街並みを一望できます。
客室内には洗面台を完備。フロアごとにお手洗いがあり、広々とした共有の洗面台もあります。洗濯室もあるので連泊にも便利。
また、浴衣やフェイスタオル、アメニティ類も準備されています。
 
いろは会館に宿泊する楽しみの一つがお風呂。
男女別の大浴場「大師の里温泉」は、実は善通寺市内では唯一の温泉で、宿泊した方のみが入浴できるのです。
16時~21時の間なら自由に入浴することができます。
さらっとした泉質のお湯で、お遍路や街並み散策の疲れも癒されました。
 
「宿坊」というと一般の観光客にはあまり馴染みがないのですが、設備は一般の宿泊施設と同じで大きな不便はありません。21時の門限までは、夕食後に街中に出かけたり、ライトアップされた五重塔を見に境内を散策したりしてもOK。
近くの酒店で地酒を買って、お部屋で晩酌を楽しむ方もいるそうです。
※他の宿泊客の方のご迷惑にならない範囲でお過ごしくださいとのことです。
 
お食事は食堂で。
 
夕食、朝食は和定食をいただくことができます。
料理長自ら仕入れるという食材は、香川県産の海産物や農産物が中心。
季節によってメニューも変わります。
※宿夕朝食の提供は宿泊客のみとなります
※夕朝食は精進料理ではありません
 
 
翌朝は早起きして朝のおつとめ(法要)に参加。
まだ夜が明ける前の6時(夏季は5時半)から始まります。
まずは宿泊棟から廊下を通って御影堂へ。
内陣の中央に管長が座り、山内僧侶(勤務している僧侶)の皆さんが座られます。
参拝客はその周りの外陣に座ります。
妙鉢(みょうばち)というシンバルのような楽器が鳴らされるとおつとめがスタート。
前讃(ぜんさん・最初にお経を唱える僧侶)の後に続いて、僧侶の皆さんが一斉にお経を唱えます。
凛とした美しい声が堂内に響きます。
歌とも朗読とも言えない読経独特のリズムと節が心地よく感じられます。
 
生活する中でお経を聞く機会はなかなかありませんが、改めてその響きに身をゆだねてみると何だか頭がクリアになっていくよう。
言葉の意味が分からなくても、不思議と心が落ち着くのを感じました。
読経が終わると、参加者も一緒に般若心経、光明真言(こうみょうしんごう)、大師宝号(だいしほうごう)(「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)」)を唱えます。
 
時間にすれば30分強。おつとめを終えると、夜が明けてすっかり明るくなっていました。
※通常、御影堂内は撮影禁止です
 
身支度や朝食を終えても、時間に十分余裕があります。
せっかくなので朝の境内を散策してみることにしました。
 
境内はもちろん、善通寺の周辺を歩いて散策するときに便利なのが「善通寺てくてく文化遺産」というアプリ。
(画像:善通寺てくてく文化遺産提供)
 
見どころが一覧になっており、マップアプリとも連動しているので、歩く先にどんな文化遺産があるのかも一目瞭然。それぞれの名称をタップすると詳しい解説も閲覧可能です。
各スポットをスタンプラリーのようにめぐる仕組みもあり、楽しみながら文化遺産について知識を深めることができます。
 
多言語に対応しており、イベントやワークショップなどの情報もチェック可能。
散策のひとときがぐっと興味深いものになること間違いなしです。
人気がなく、静かですがすがしい伽藍。写真左が金堂、右が五重塔です。
善通寺の本堂である金堂の内部には、御室大仏師(おむろだいぶつし) 北川運長(きたがわうんちょう)が1700年(元禄13年)に造った薬師如来坐像がお祀りされています。
金堂は国指定の重要文化財でもあります。
五重塔も壮観です。現在の塔は、1845年に再建が開始され、1902年に完成した4代目。
日本で3番目に高い五重の塔でもあり、毎年5月の公開日には内部に登ることもできます。
こちらも国の重要文化財に指定されています。
散策を終えた後は宝物館に行ってみました。
宝物館は御影堂の裏側にあります。
※宝物館の拝観は、戒壇めぐりとセットになっています。御影堂に戒壇めぐりと宝物館拝観の受付窓口がございます。
館内には善通寺に代々伝わる寺宝や、敷地周辺から発掘された遺物などが展示されています。
※通常、宝物館内は撮影禁止です
通常約30点ほどの寺宝が展示されており、内容は時季によって変わります。
 
こちらは国の重要文化財にも指定されている、平安時代の地蔵菩薩立像。
いわゆる「お地蔵さん」よりは大きくすらっとした体つきで、やさしい眼差しが特徴的。
台座や光背(こうはい)の細部まで緻密に表現されています。
 
こちらの奈良時代の如来像の頭部は、幼少の弘法大師空海(幼名:真魚/まお)も拝んでいたと考えられているそう。
館内には国宝も展示されており、見ごたえ十分。
 
通常は非公開のため複製やパネルでの紹介ですが、金銅錫杖頭(こんどうしゃくじょうとう)は毎年6月13日・14日の2日間、一字一仏法華経序品(いちじいちぶつほけきょうじょひん)は毎年11月3日に特別公開が予定されているとのこと。
タイミングが合えば必見です。
 
弘法大師像が手に持っている五鈷杵(ごこしょ)という仏具についての説明もありました。
時代を超えて受け継がれてきた仏像や書画を前にし、長い時の流れと、今日まで引き継がれてきた信仰の心を感じるひとときでした。
 
宝物館の脇には、弘法大師が御誕生された折に用いられたという産湯の井戸が今も残されています。
一通り散策を終えて御影堂に戻ってみると、近所の方が散歩に来たり、近くの学生さんがランニングをしに来たり…。
お遍路さんはもちろん、地元の人にも愛されているお寺であることを改めて実感しました。
何度訪ねても、ゆったりとした時間の流れる善通寺。心身ともにパワーチャージできる滞在となりました。
 
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総本山善通寺
住所   香川県善通寺市善通寺町3-3-1
電話番号 0877-62-0111
https://www.zentsuji.com/
善通寺てくてく文化遺産
https://www.zentsuji-tekuteku.jp/
 
宿坊「いろは会館」
精進料理ランチコース(3,000円)
営業時間 11:00-13:00
※1週間前までに要予約
※食材調達の都合から、3名以上からのみお食事可能(2名以下不可)
 
宿泊
1 泊2 食付 8,000 円/人 
チェックイン15:00〜(17:00 を過ぎる場合、要事前連絡)、チェックアウト〜9:00
※要事前予約
朝のおつとめ:5月1日〜9月30日 5:30〜、10月1日〜4月30日 6:00~
https://www.zentsuji.com/shukubou/
 
宝物館(戒壇めぐり含む)
拝観料  大人(高校生以上)500円、小人(小・中学生)300円
営業時間 8:00-17:00(受付16:30まで) 

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