暮らしを醸す。 蔵めぐり 綾川町

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創業1790年(寛政2年)。230年以上にわたり、香川県綾歌郡で酒造りを続けている綾菊酒造。
香川県産の希少な酒米「オオセト」にこだわり、昔ながらの伝統的な技術に最新の設備を織り交ぜながら、「香川ならではのお酒」を生み出しています。
今回は、地元民には馴染み深いお酒・綾菊の酒造見学に参加しました!
高松市街から車で約40分の「綾菊酒造」は、背後には雄大な讃岐山脈、すぐ近くには香川屈指の清流・綾川が流れている、香川県綾歌郡の自然と水に恵まれた場所にあります。
 まだ午前のキリッと澄んだ空気のなか、現地に到着しました。静かな田園地域のなかに、昔のままの姿を今に残した歴史を感じる蔵が立っています。
「綾菊酒造」が生まれたのは、1790年(寛政2年)。酒造のある綾川町山田地区は土壌が肥沃で寒暖の差が大きく、お酒に使われる米づくりに最適な場所でした。
また、この場所に酒造ができたのは、良質な水に恵まれていたからです。ここには讃岐山脈からの伏流水が流れ、きれいな水を取ることができます。「綾菊酒造」では、創業当時から綾川の良質な水にこだわり、酒造りを続けてきました。
今回の酒造見学を出迎えてくれたのは、岸本健治社長。「綾菊酒造」の昔ながらの伝統を引き継ぎつつ、徐々に新しい設備を導入し、より美味しい酒造りと販路拡大に取り組まれています。
「綾菊のお酒は、この綾川の水や土壌、そしてお米を作ってくれている農家さんあってのものですからね。もっともっといいお酒を造って広めていくのが私たちの務めです」
 
 
見学内容は、このようになっています。(完全予約制で、所要時間は約1時間。)
・蔵の歴史と酒造りについての説明とビデオ上映(約15分)
・蔵見学(約20分)
・工場見学(約10分)
・蔵の店でお買い物(約15分)
さっそく、見学へ移ります。
ずいぶん威厳のある蔵だと思っていたら、なんと香川県の登録有形文化財に指定されているとのこと。しっかり手入れをして、創業からの姿を今に残しているのです。
江戸時代から今に至るまで酒造りを続けてきた、悠久の歴史を感じさせてくれます。
「綾菊酒造」のこだわりは、香川県産米を使った酒造り。「オオセト」は、お米の性質を熟知して使いこなせば、ポピュラーな山田錦などとは違った風合いを醸し出すそうです。
ビデオ上映にもありますが、扱いが難しい「オオセト」を、研究に研究を重ねて美味しいお酒に変えてきたのが、綾菊の名誉杜氏・国重弘明(くにしげひろあき)さん。
 綾菊の看板である「国重」は、この国重さんの名から取られています。杜氏の名を冠した銘柄を作ったのは、「綾菊酒造」がはじめてだそう。

しかし、「オオセト」を使い続けるのには、紆余曲折があったといいます。
「平成16年頃まではたくさん栽培されていた『オオセト』ですが、需要の減少からどんどん作付面積が減り、ついにこの綾川町で栽培されなくなってしまったんです。」
と語るのは、岸本社長。
 そこで平成29年度(2017年度)から地元の農業法人と連携し、「オオセト」の栽培を復活させることになりました。水田センサーを圃場(ほじょう)に導入し、従来の経験と勘による農業だけではなく、農業現場で蓄積されたデータの分析により、さらに質の高い「オオセト」の米作りを目指しているそうです。
 
続いて、蔵の中を案内していただきました。蔵全体が、冷蔵庫のようなもの。お酒の美味しさをキープできるよう、徹底的な温度・湿度管理がなされています。
蔵には、「オオセト」と並んで「綾菊酒造」の大事な資源である、「水」が祀られています。いいお酒になるもならないも、水次第。綾川の伏流水を大事にしているのかが分かります。
工場へ。最大800kgの米を蒸す巨大な甑(こしき)や、発酵をコントロールするタンクなど、歴史ある建物内に最新鋭の設備が導入されています。
また、かつては重い蒸し米を蔵人が1階から2階まで背負って運んでいましたが、現在ではエアシューターを使って自動で移動させています。
酒造りのキモは温度管理にあるとされています。昔とは気候も変わり、気温の変化も著しい今、清酒のもととなる「もろみ」を絞る工程では、冷房設備も欠かせません。
創業から何百年と培われてきた蔵人の技術に、設備の機械化。普段飲んでいる日本酒が、このように造られているのか、と見入ってしまいます。
 
岸本社長は、
「情熱をかけて造っている『オオセト』の更なる品質向上には設備投資が欠かせませんでした。小さな酒造ですからいきなりは変えられませんが、何年もかけて徐々に取り組んできたんです。今後も徐々に生産能力を高め、多くの人に飲んでもらいたい。」と語ってくれました。
約45分の見学のあと、蔵に併設するお店でお買い物ができます。
今回は香川県産「オオセト」を100%使用した「特別純米しぼりたて 綾菊」を試飲させていただきました。口に含んだ瞬間、ふわっと広がる香り。キリッとして後味がよく、軽やかな飲み心地がたまりません!
地元のお米と水にこだわり、郷土を愛する心が詰まったお酒を堪能することができました。
このお店では、無濾過生原酒の限定品や、同じく香川産の酒米「さぬきよいまい」や「おいでまい」を使った日本酒、オリーブ酵母でつくられた「綾菊 さぬきオリーブ純米酒」などが販売されています。
時期や在庫によって置かれているものは異なりますが、あまり流通していない希少な銘柄が販売されている場合もあるので、要チェックです!
今回、酒造見学をさせていただいて、美味しいお酒は造り手の技術はもちろん、自然とお米、そしてお米を作っている農業法人が1つになって生まれていることがよく理解できました。
いわばお酒は、人と環境が作り出す芸術品のようなもの。いつくしむように日本酒を味わいたいものです。
素敵な蔵と、「オオセト」にかける情熱の物語。日本酒好きなら、ぜひ「綾菊酒造」で酒造見学に参加してみてください!
綾菊酒造
見学時間 10:00〜16:00(要予約)
定休日 年末年始・お盆(土曜・日曜・祝祭日は要確認)
住所 香川県綾歌郡綾川町山田下3393-1
電話番号 087-878-2222
HP  香川・讃岐の地酒・綾菊酒造 (ayakiku.com)
※車を運転される方は試飲ができません。

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