【第1回】2つの国際芸術祭をめぐる旅                        ~後編:奥能登国際芸術祭(ART Oku-Noto 2022)~

後編では、石川県の「奥能登国際芸術祭」の魅力をご紹介します!
来年開催される「奥能登国際芸術祭2023」の参考に、また、奥能登の旅の参考にしてみてください!
待ち合わせは「さいはてのキャバレー」で
  • 「このイルカの壁画は芸術祭の前からのものかな、まるで奥能登のラッセンみたいだね」と今瀧さん。

    「このイルカの壁画は芸術祭の前からのものかな、まるで奥能登のラッセンみたいだね」と今瀧さん。

香川県から石川県珠洲市を訪れた今瀧さんを、珠洲市在住・サポートスズの小菅さんが「奥能登国際芸術祭」の常設作品を特別公開する「ART Oku-Noto 2022秋」(終了:9月17日~19日開催)へとご案内! 芸術祭・特別公開の期間以外も、常設の全18作品は10名以上の予約で屋内作品も鑑賞でき、予約なしでも楽しめる屋外作品もあるので、ぜひ奥能登の旅の参考にしてください。
小菅さんは8月末に「瀬戸内国際芸術祭」に「こえび隊」のサポートスタッフとして参加し、その際に出会った今瀧さんとは約1ヶ月ぶりの再会。待ち合わせの「さいはてのキャバレー」は、珠洲市と佐渡市を結ぶ定期船の待合室があった場所です。
定期船は1978年に廃止されましたが、「奥能登国際芸術祭2017」を機に19世紀末にパリで産声をあげたキャバレーのように、住民・旅行者・芸術家が集い、最先端の文化芸術を楽しみ交流する場所を目指して生まれ変わりました。2017年の芸術祭後も貸館として利用され、2020+ではインフォメーションセンター、公式グッズの販売や憩いのスペースに。
「さいはてのキャバレー」の屋外のテラスには、2020+の新作《石の卓球台第3号》が常設展示されています。卓球の名手としても名高い浅葉克己の作品で、普段も卓球台は見ることができますが、今回のような特別公開のときは、ネットやラケット、ボールも用意されているので卓球体験もできます。

浅葉克己《石の卓球台第3号》
石川県珠洲市飯田町1-1-13

 
民具とアートが融合した「スズ・シアター・ミュージアム 光の方舟」へ
  • 入口には2020+のポスターや公式ガイドブックの表紙を飾った「珠洲の大蔵ざらえ」で寄贈された大八車が。

    入口には2020+のポスターや公式ガイドブックの表紙を飾った「珠洲の大蔵ざらえ」で寄贈された大八車が。

  • 世界土協会の「Soilstory -つちがたり-」は、「大蔵ざらえ」で得た「もの・証拠」を素材に民具の声をテーマとしたインスタレーション。

    世界土協会の「Soilstory -つちがたり-」は、「大蔵ざらえ」で得た「もの・証拠」を素材に民具の声をテーマとしたインスタレーション。

  • (左)祭りとは会いたい人に会える約束の場所ととらえ、古着を裂いて結び直した「記憶の紐」と、祭りで実際に使われていたキリコを組み合わせて約束の場所を表現した大川友希の「待ち合わせの森」。(右)能登の風習「ヨバレ」で使われてきた赤御膳を積み重ねた漆器の塔。足元を覗き込むと、灯でゆっくりと浮かび上がる奥まで続く御膳の列が。

    (左)祭りとは会いたい人に会える約束の場所ととらえ、古着を裂いて結び直した「記憶の紐」と、祭りで実際に使われていたキリコを組み合わせて約束の場所を表現した大川友希の「待ち合わせの森」。(右)能登の風習「ヨバレ」で使われてきた赤御膳を積み重ねた漆器の塔。足元を覗き込むと、灯でゆっくりと浮かび上がる奥まで続く御膳の列が。

  • サポートスタッフとして参加している地元の年配の方から、民具や風習について聞くこともできます。

    サポートスタッフとして参加している地元の年配の方から、民具や風習について聞くこともできます。

  • 会場中央には珠洲の古代の地層から掘り出した砂を敷き詰め、木造船、古いピアノなどが据えられています。まるで目の前に海があるように見えるときもあります。

    会場中央には珠洲の古代の地層から掘り出した砂を敷き詰め、木造船、古いピアノなどが据えられています。まるで目の前に海があるように見えるときもあります。

  • 南条嘉毅「余光の海」の作品は、光、音楽、スモークなどの演出で、記憶の残照のような世界に引き込まれます。

    南条嘉毅「余光の海」の作品は、光、音楽、スモークなどの演出で、記憶の残照のような世界に引き込まれます。

  • 客席の下にはOBIによる「ドリフターズ」の展示。

    客席の下にはOBIによる「ドリフターズ」の展示。

  • (左)竹中美幸「覗いて、眺めて、」は、半透明なガラス小屋の中に「大蔵ざらえ」で見つかった日記をもとにした珠洲の現在と過去を表現。(右)舟小屋に眠っていた木造船の古材を配し、珠洲の海と船のイメージをめぐる三宅砂織の作品。

    (左)竹中美幸「覗いて、眺めて、」は、半透明なガラス小屋の中に「大蔵ざらえ」で見つかった日記をもとにした珠洲の現在と過去を表現。(右)舟小屋に眠っていた木造船の古材を配し、珠洲の海と船のイメージをめぐる三宅砂織の作品。

  • (左)久野彩子「静かに佇む」は、朽ちた農機具に金属の造形物を添え、北前船の寄港地として栄えた街の風景や、過去とまだ見ぬ風景を映し出しています。(右)鹿の角・骨を素材とした作品で注目を集める橋本雅也が、クジラの骨で制作した作品。

    (左)久野彩子「静かに佇む」は、朽ちた農機具に金属の造形物を添え、北前船の寄港地として栄えた街の風景や、過去とまだ見ぬ風景を映し出しています。(右)鹿の角・骨を素材とした作品で注目を集める橋本雅也が、クジラの骨で制作した作品。

  • 「スズ・シアター・ミュージアムは期待以上!! 多くの作家が参加しているのに、このまとまりや世界観は素晴らしい」と今瀧さんも絶賛。会場を去る前に2020+のメインビジュアルにもなった、海風で斜めに育った松の木と一緒にポーズ!

    「スズ・シアター・ミュージアムは期待以上!! 多くの作家が参加しているのに、このまとまりや世界観は素晴らしい」と今瀧さんも絶賛。会場を去る前に2020+のメインビジュアルにもなった、海風で斜めに育った松の木と一緒にポーズ!

「スズ・シアター・ミュージアム」は、「奥能登国際芸術祭2020+」で誕生した日本海を見下ろす場所にある目玉作品。2016年に閉校した小学校の体育館を改修し、市民総参加型プロジェクト「珠洲の大蔵ざらえ」で珠洲市内の家々に眠っていた生活用具の数々が一堂に集められました。それらが民俗・人類学的視点から展示紹介されるとともに、気鋭の8組のアーティストたちの手で珠洲の歴史や風景、風土などをテーマとした作品として新たな命が吹き込まれました。

スズ・シアター・ミュージアム
石川県珠洲市大谷町2-47(旧珠洲市立西部小学校)
一般800円/大学生600円/小中学生400円
※会期外は10名以上の事前申込で鑑賞可
塩田の歴史と記憶を作品にした「時を運ぶ船」
  • 船の展示室の隣の部屋には、制作の様子を映像で見ることができる覗き窓があります。

    船の展示室の隣の部屋には、制作の様子を映像で見ることができる覗き窓があります。

「塩田(しおた)千春さんの塩田(えんでん)をモチーフにした作品です。ここ、大谷エリアに広がる塩田に自らのルーツとの関わりを感じ、外浦沿岸を望む旧保育所を作品の場所に選んだそうです」と小菅さん。「奥能登国際芸術祭2017」からの人気作品で、塩田に敷きつめる砂を運ぶために使った砂取舟から、空間いっぱいに赤い糸を張り巡らせ、塩づくりの技術を今に守り伝えてきた人びとの歴史と記憶を紡いでいます。珠洲の揚浜式塩田は何度か消滅の危機に瀕しながらも、日本で唯一、古代から連綿と続く伝統的な製塩法です。
 
石川県珠洲市清水町4-41(旧清水保育所)
※会期外は10名以上の事前申込で鑑賞可
廃線跡のメッセージ「Something Else is Possible/なにか他にできる」
  • 71本の角パイプが寒色から暖色へ虹色のグラデーションを描き過去・現在・未来を表現しています。

    71本の角パイプが寒色から暖色へ虹色のグラデーションを描き過去・現在・未来を表現しています。

  • 双眼鏡の先に見えるのは・・・。

    双眼鏡の先に見えるのは・・・。

  • 双眼鏡の先に見えた看板と、旧蛸島駅の方へ線路を歩いて行くこともできます。

    双眼鏡の先に見えた看板と、旧蛸島駅の方へ線路を歩いて行くこともできます。

奥能登国際芸術祭2017の後は常設作品となり、今や珠洲の風景の一部になったトビアス・レーベルガーのカラフルな作品。虹色のグラデーションを描き、うねるような四角形のフレームの中を鑑賞者が進むと、双眼鏡が設置されています。レンズを覗くと「のと鉄道」の終点だった旧蛸島駅の先に作家からのメッセージ「Something Else is Possible(なにか他にできる)」の看板が見え、道路を挟んだ先の線路跡を歩いて近くまで行くこともできます。
 
石川県珠洲市正院町(旧蛸島駅周辺)
おわりに
「奥能登国際芸術祭」の常設展示を巡るアート満喫の旅はこれにて終了! みなさんの奥能登の旅の参考になると幸いです。あわせて開催中の「瀬戸内国際芸術祭2022」、来年開催の「奥能登国際芸術祭2023」も、ぜひお楽しみください!
 

<プロフィール>

小菅杏樹(こすが・あんじゅ)さん
奈良県出身。2021年開催の「奥能登国際芸術祭2020+」に感銘をうけて2022年5月に珠洲市へ移住。「奥能登国際芸術祭2017」の開催をきっかけに結成された「サポートスズ」のスタッフに加わり、作品メンテナンス、作家の対応、作品案内、パンフレット等のデザインの仕事に携わる。
 
<プロフィール>
今瀧哲之(いまたき・てつゆき)さん
香川県出身。香川県庁職員で、「瀬戸内国際芸術祭」を立ち上げから担当。もともとはアートに興味がなかったが、今では大のアート好き。珠洲市へは「奥能登国際芸術祭2017」の際に訪問。
 
【イベント情報】
瀬戸内国際芸術祭2022 <秋会期>
期 間:2022年9月29日(木)~11月6日(日)
会 場:直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、犬島、高松港、宇野港
   (秋会期のみ)本島、高見島、粟島、伊吹島
問合せ:瀬戸内国際芸術祭総合案内所 087-813-2244
≫瀬戸内国際芸術祭公式HP

奥能登国際芸術祭2023
期 間:2023年9月2日(土)~10月22日(日)
≫奥能登国際芸術祭公式HP

関連記事
≫2つの国際芸術祭をめぐる旅~前編:瀬戸内国際芸術祭(SETOUCHI TRIENNALE 2022)~
≫石川県の記事(ほっと石川旅ネット)

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